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2011/01/10

人としての価値

去年、ひょんなことから中央アフリカ出身の黒人の女の子と知り合った。

イタリアに来て3、4年経つ彼女は、手に職があるわけでも、学識に優れたわけでもなく、家政婦やベビーシッターをしながらなんとか売春の仕事にだけは就きたくないとあがきながらやってきて、去年はやっとホテルのメイドの仕事に就くことができ、とても喜んできた。

その彼女からイタリアに移民するまでのエピソードを聞いたのだが、改めて自分たちがまだまだ恵まれているのに思い知らされた。

貧困が深刻な国を出るために現地通貨で相当な大金をブローカーに支払い、渡航するわけだが、北アフリカからの移民とはわけが違い、まずは、北アフリカに到達するまでの厳しい旅が待っているわけで、彼女の場合は隣国の偽装パスポートを渡され、イタリアに来て戦争難民としてみなされるような形でブローカーからの身分証明書といくばくかのユーロを与えられ、いざ出国することに。

ただ、交通手段も未発達の砂漠を越える旅は過酷なもので、ぎゅうぎゅう詰めのトラックに載せてもらえるうちはまだ幸運なほうで、大半は徒歩で厳しい気候の中、一日1個の小さなツナ缶と貴重な水分で食いつなぎ、なんとか生き延びながら北上を続けていく。当然のことながら途中で命を落としていく人たちも少なくない。

また国境付近になると、どこの国も国境警察が銃を持って見張っていて、自国に追い返されることは皆無に近く、見つかったら最後、虫けらのように銃殺されてしまうらしい。

そのため、国境越えのために砂漠の砂の下に何日も、長いときは数週間姿を潜ませ、タイミングを伺いながら、北上し続ける。

奇跡的に北イタリアの港までたどり着くことができた人たちはブローカーが手配した小さな船にまたぎゅうぎゅう詰めにされて出港、ほとんど呼吸もできないような船の中で、ここでもあともうちょっとというところで命尽き、海に葬られる人もまた出てくる。

最後イタリア最南の離島、ランペドゥーサの海岸線が見えてくると、船に乗り込んだ移民たちは沿岸で海に投げ出され、後は自力で海岸まで泳ぎ着き、やっとイタリアに到着。

大半の移民は入国管理所に連行され、強制送還される移民と難民として受け入れる難民との振り分けを行う。

ただ、アフリカ諸国と違い、ここでは少なくとも人間としての扱いを受け、飢餓状態で到着した難民たちには食事が与えられ、一時係留所にて休息用の寝床が与えられ、長い航路で疲れ果てた彼らにはまるで天国のように思えるらしい。

彼女の話を聞いていて、まだまだ選択の余地のない環境下で生きるか死ぬかの選択をせまられるような人たちが沢山いる現実があるのに気づかされた。

不況の中とはいえ、普通に生活できる環境がまだ整備されていて、何かしらの選択の余地のある国で、いろいろと細かいことを言い始めるときりがないが、それでも一人の人間として何不自由なく生きていける場所で生まれ育ち、移り住み、普通の生活ができている私たちはまだまだ幸せだと思う。

イタリアも北部同盟の台頭で、場所によっては人種差別で暮らしづらい面があるのも実際のところだとは思うが、それでも無差別に銃殺されることも、政治的な理由で投獄されることもなく移民として受け入れられることは、世界的なレベルで考えるとまだまだ恵まれているほうで、私たちの悩みは贅沢な悩みなのかもしれないと考えさせた機会だった。

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コメント

過酷な状況を乗り越えて移民されるのですね。
本当にいろいろと考えさせられます。

アンジー様、2011年もどうぞよろしくお願いいたします。


投稿: JUNPIN | 2011/01/10 21:10

遅ればせながら、今年も宜しくお願い致します。

素晴らしいお話をありがとうございましたheart04
信じられない現実なんですね。

ぜひ、近い内に私のブログでもこの日記をご紹介させて下さい。
多くの方に読んで頂きたいですshine

投稿: ロコママ | 2011/01/11 02:15

新年そうそう、幸せな日本にいて日常にながされて生活していると、ふと忘れてしまいそうな事実にはっとさせられました。
景気が悪化し、信じられないような事件が日々繰り返されてはいるものの日本はまだ幸せだと思う。

選択の自由をもてる幸せ、その最大の幸せのために努力するんだよなと思う。

命をかけて最低限の生活を自分の手で手に入れる。
その行動力は想像もできないが、その少女が少しでも幸せになれるよう祈りたい。
そして子供にもせ怪獣のいろいろなことを伝えたい。

投稿: あん | 2011/01/12 04:19

Ayaちゃん、本当にごぶさたです。一年たっちゃった!
恐ろしく早い一年でした。最近時間の過ぎ方が加速しています。。。
そんな中Ayaちゃんの文章を読んで、もっと日々を大切にしなきゃと改めて感じたわ。
日本にいる私たちはあまりにも平和ボケしているよね。

「選択の余地のない環境下で生きるか死ぬかの選択をせまられるような人たちが沢山いる現実がある・・・」

いろんな思いがあって一言にまとめられないけど、とりあえず、今ある現状に感謝して愚痴なく過ごしていこうと思いました。

また帰国の際は声掛けてね。

投稿: パーゴラ | 2011/01/12 06:44

junpinさん
長いメイル頂いておきながらずっとメイルバックしようと思いながら連絡しないままでごめんなさいね!またゆっくりお便りします!こちらこそ今年もよろしくねっ。
極貧で飢餓に苦しむアフリカ諸国からの移民などの現実は想像以上に過酷なのを知り、それまでいろいろとイタリアの納得いかない面とかに文句言ったりする自分を省みちゃいました。
NZやオーストラリアだと国の歴史がまたヨーロッパとは違うから移民の問題とかは微妙に違う部分もあるのかしら?でも世界中の3分の1の人たちはまだ飢餓や貧困による危機的な状況に瀕している状況。でも先進国に住んでいると、だんだんそういう現実とはかけ離れたところで、無意識のうちに贅沢な悩みでわがままを言ってしまうことってあるけど、自分たちはまだまだ幸せなのを理解して、その中で自分の立場を明確にして生きていくのが大事なんだと思ってます。

投稿: Aya | 2011/01/12 09:59

ロコママさま

こちらこそご無沙汰しております。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
イタリアにいてもかなりショッキングな話だったんですけど、日本人にしてみたら、想像を絶する話ですよね。
悲しいことにこういう現実がまだ沢山あるのが実情のようです。
つたない文章ではありますが、なかなか接することのない外国の現実いろんな人に知ってもらえればと思います。

投稿: Aya | 2011/01/12 10:02

あんちゃん

今年もよろしくね!
コメント有難うねっ。ほんと日本のように恵まれて、社会がしっかりと機能している国で生活していると、嘘のような話で愕然とするよね。
どこの国でもいろいろとネガティブファクターは抱えているとはいえ、それでもまだまだ私たちが置かれている状況は恵まれているのを改めて感じた機会でした。
移民の中でも日本人は本当に恵まれているほうで、同じEU圏外の外国人という立場ながら、ついついイタリア人に準ずるような形での保障を望んでしまったりする部分もあるんだけど、ここに住めるだけで幸せに思っているという彼女の言葉を聞いて、そこの言葉の裏にある厳しい現実に気づかされたよ。
イタリアで彼女のように教養レベルも決して高くない人たちが移住してきた場合、悲しい現実として大半のアフリカ女性は売春組織にいいように使われることが多く、彼女のような例はマイノリティになるんだけど、それでもちょっとずつステップアップしてよりベターなものを得てほしいと私も祈ってます。

投稿: Aya | 2011/01/12 10:13

パーゴラさん

久しぶり~。今年もよろしくね。毎日忙しく家事と仕事を両立しながら充実した人生を送っていることだと思います。
ほんと、選択の余地がない人たちがまだまだ世界中には沢山いる現実、ついつい恵まれた場所で生活しているとそういう存在すら遠いものになってしまっているよね。
自分の境遇に感謝して、大事に生きなくちゃと思うのと同時に、自分が出来ることって何かないかと考えさせられたよ。
多分日本の中でも知られてないだけで苦しんでいる人たちとかつらい境遇に置かれている人たちっているんだと思う。いろんな側面から見て、少しでもいろんな人たちが一緒に暮らしやすい世界になるといいなと祈りたいわ。

投稿: Aya | 2011/01/12 10:21

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