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2008/04/21

アルトアディジェでの素敵な一時

Bressanone 相変わらずすっきりしない天候が続いているイタリアですが、先週末はオーストリアの国境近くの小さな州、アルトアディジェに行ってきました。

南チロルのこの地方はイタリアながら、公用語はドイツ語(厳密にはちょっと違うみたいですけど・・・)を使っていて、町並みもイタリアよりも近郊の国、ドイツ、オーストリアに似通っています。

目的地はブレッサノーネの隣にある小さな町、ヴァルナ。そこにあるチーズのリファイナー、DEGUSTのアトリエ訪問が今回の旅の目的。ずーっと行きたかったのに、片道5時間半の道のりを考慮すると日帰りではいけないのもあり、仕事でずっとばたついていて全然時間が取れなかったのですが、今回待つこと半年以上、やっと念願が叶いました。

さて、彼らのアトリエに到着したのは、お昼前。まずは、オーナー夫妻のご自宅に招かれ、ランチをご馳走になることに。お料理は全てご主人のHansiの手作り。

最初ペペロンチーニにカプリーノを詰めたものとカマンベールを洋ナシを乾燥させて挽いた粉でリファイニングしたものを美味しく頂きながら食前酒の地元の白ワインを頂きました。

Capretto_2そしてセコンドはちょうどお友達が譲ってくれたというカプレットをジャガイモとブロッコリーとフェンネルと一緒にオーブン焼きにしたもの。

普段、正直子山羊を食べると思うと可哀相なのと、臭いが気になるのもありほとんど食べないお肉ですが、折角大事に作ってくれたものだし、頂いてみると・・・

これがめちゃくちゃ美味しかったんですよ~。本当に柔らかい肉質で臭いも気にならず、フェンネルとローズマリーの香味野菜も主張しすぎず、優しく風味を添えてくれてました。

元々22年間、ご自分のリストランテを経営していたHansiですが、チーズに対する情熱が高じ、市販のものでは飽き足らず、独自のリファイニングをリストランテで始めたのがそもそも今の仕事のきっかけだったそうですが、13年前にチーズの仕事に専念することに決めて、今ではすっかりチーズのリファイニングのプロとして活躍しています。

さて、お食事の後は奥さんのEdithに連れられ、熟成庫として使っている第二次世界大戦中の砦(Bunker)に案内してもらいました。

Degust1 山道をちょっと歩くと、目の前にいきなり出てきたBunker。

お喋りに夢中ですっかり写真を撮るのを忘れてきたので(爆)、ネット検索した画像で失礼っ。

石灰岩で出来た岩の中に細かく間仕切りされたスペースが広がっていて、その中にぎっしりとチーズが並んでいました。

自然の洞窟の環境はチーズの熟成に最高のコンディションで、温度7度、湿度85%を示していました。夏場も+3度程度でほとんど温度変化しないそう。

Edithいわく、”Bunkerはムッソリーニが残した数少ない有益なものの一つ”

確かに、ね。

リファイニングだけでなく、リファイニング用に熟成の若い玉で入手したチーズの数々をこちらの中で引き続き熟成し、リファイニングにちょうど良い熟成コンディションのところに持っていったり、アルペッジョ、マルガのチーズ(夏場に山岳部で放牧する動物から搾られる生乳をそのまま山小屋で仕込んだもの)の長期熟成などをこの熟成庫で行うのも彼らのお仕事。

Stagionatura2 こんな感じで大小のさまざまな山のチーズが並んでいて、それぞれ食べ頃の良いコンディションを保ちながら熟成が進められます。

大多数のチーズは豊かな自然に恵まれたこの近辺やオーストリアのチーズたち。

小さな農家で細々と作られている名前もないようなチーズも多く、こういう昔ながらの生乳で仕込んだチーズを大事に扱い続ける彼らの思い入れは本当に素晴らしいなって思います。

こういう小さなつくり手のチーズは形も味も安定しないものがほとんどですが、敢えてそういうチーズのリファイニングに挑戦しようとするHansiのこだわりには頭が下がります。

残念ながら、日本人は規格化された商品に慣れているため、実際にこの手の零細農家の商品を届けるのは多難で、毎ロット違う商品を手にして、そのチーズを通して季節が変わったり、気候が変わったりするのを感じてくれる心の広い消費者にはなかなか出会うところにはいきませんけど、せめてこうやって今も儲けは二の次で大事にチーズを作り続けている人たちがいることを知って欲しいと思います。

Bunker5 これは山の斜面で栽培したものを丁寧に手作業で刈り取って干草にしたものを使用して樽の中でリファイニングしている光景。

干草の香りってこんなに芳しいものだったんだって思えるくらい、アルプスの恵みを受けて育った植物の香りはしっかりとしています。

そしてその中で寝かせられるチーズは徐々に干草から香りをもらい、チーズのコクと干草の芳しさが上手くマッチして、口ではうまく表現できないような風味豊かなチーズへと変化を遂げます。

Degustazione 熟成庫を見学した後は、アトリエに戻り、リクエストを入れておいたチーズのテイスティングへ。

取り扱いがデリケートで商品としては出せないものも結構ありましたが、それぞれのチーズがいろんな形でリファイニングされることで姿を変え、文字通り磨き上げられ、独特の個性ある風味を楽しませてくれました。

あくまでチーズは嗜好品で好き好きはあるにしろ、ベースのチーズを知り尽くし、妥協することなく常にブラッシュアップし続けているHansiだからこそ、この素晴らしいチーズを生み出しているんだってつくづく思います。

自分の仕上げるチーズに対して常に謙虚で、批判も真摯に受け容れる素晴らしい人格者。お食事の時に、自分たちが仕事を始めた時のいろんなエピソードなども聞かせてくれましたが、お互いに妥協をせずに自分たちの信じる道を進んでいけば自ずと道が開けるという信念を胸に、これからもより良いものを目指して頑張りたいなというとても前向きな気持ちになれました。

こういう素晴らしいパートナーと楽しく仕事できること、そしてささやかではあっても継続して根気強く仕事を続けている自分たちの仕事を評価してくれ、お互い気持ちよく仕事できること、本当に有難く幸せに感じます。

あいにくイタリアでは目先のことにとらわれるメーカーが多いのも事実で、これまで余りなかった手づくりの貴重な食材を異文化の国に導入する難しさを共有してくれないほうが圧倒的に多いですから・・・

目が飛び出るくらい高いチーズも多いのですが、彼らの仕事ぶりを見ていて、この価格は適正価格だなって実感。

またゆっくり折を見て、ちょっとずつ彼らのチーズの数々、紹介したいと思います。

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コメント

おいしそーheart04チーズもワインも大好きな私。
これはいつかイタリア行かないとねwink
ブロッコリーと小山羊のお料理、とっても美味しそうで
ちょうどランチタイム前の私には なんとも罪な一枚ですwobbly

投稿: marian | 2008/04/22 05:13

私、イタリアの地方性に基ずく人間性で、州によってあう。あわない。があるんですけど・・。ロンバルデアや(ミラノの人なんか特に好きだし)ピエモンテ地方の人は大丈夫なんですけれど・・アルトアディジェは、どうしても駄目なんですよ。ドイツが好きじゃないからかもしれないですけど・・。
でも・・このチーズ美味しそう。私、良く冷えた白ワインと共に少し臭みのあるチーズをクラッカーに乗せてほんの少し頂くのが好みなんですが・・。お皿に盛られたものの中に触手の動くものがいくつかあります。

投稿: ihoko | 2008/04/22 08:16

ちょうどメイルしたとこよ!
充実した滞在になったようでよかった♡
お料理、どれも美味しそう。チーズを手作りしはじめるほどだから、彼のこだわりは相当なものなんだろうね。
素材のよさをしっているからこそ、それを生かした料理もできるのでしょう!
日本の消費者は規格化された製品に慣れている・・これ納得。先日も友人の会社製品のことで問題があったんだけど、皮の発色ってどうしたって同じに出ないから、その違いを個性として受け入れて欲しいのに、クレームになっちゃったそう。天然素材のものだと同じ色(とか形)にならないから困っちゃうよね。

投稿: きっこ | 2008/04/22 08:21

marian

ニューカレにいたら、チーズもなかなかフランスやイタリアの美味しいのにありつけないのかな?
この辺はピエモンテとかからするとマイナーなチーズ産地なんだけど、零細の農家が残っていたりオーストリアのチーズが食べられたりするから結構楽しいのよ。

投稿: Aya | 2008/04/22 11:26

ihokoさま

アルトアディジェの人は相性いまいちですか?
私の場合、地域性よりも実際に最初に出会う人たちの印象によって場所とか国とかの印象ってかなり左右されるほうなので、このチーズやさんのおかげで、ずっと良くしてもらってきたのもあり結構好きなんですよねっ。
元々ドイツ、スイスも仲良しの友達が多いし、整然とした町並みもたまにはいいので(笑)、山の光景を見ながらの滞在楽しかったですよ。

いやぁ、チーズ、本当に美味しいんですよ。チーズを扱う人間の中にはこういうリファイニングにはネガティヴな意見をいう人も多いんですけどね、私は相性さえ良ければ、それぞれの特性を引き出してまた全然違う楽しみ方が出来るから、肯定派なんですけどねっ。
いやぁ、本当に白ワインと美味しくいただけるチーズ、いろいろとありましたよっ。最後はトカイのパッシートで締めくくり、幸せ~って感じでした。

投稿: Aya | 2008/04/22 11:36

いつも本当に貴重な日記をありがとうheart
1枚目の写真…絵本みたいhappy01

投稿: ロコママ | 2008/04/22 11:37

きっこちゃん
メイル送ってくれたみたいだけど、私のメイルサーバーがダウンしてたみたいだから、(珍しくもなくねっ)再送してね~。宜しく!
お陰様でとっても充実した滞在で、お腹もはじけそうだったよ(爆)彼らは自らチーズの仕込みはしてないんだけどね、仕込んでもらった小さな農家製のチーズを若い段階で引き取ってきて、その後のケアをしているんだ。
でもさ、チーズってそれぞれのチーズが好む熟成の環境が微妙に違うから、このbunkerはいろんな個室に分かれていて微妙にミクロクリマが違うから、本当に理想的な熟成庫みたいだったよ。
残念ながらさ、最近この手の天然の洞窟を使える州って減少傾向にあるんだ。ASLがそれぞれの規定を定めているんだけど、場所によっては天然のものだと衛生的ではないというので洞窟Xとか木の板はXとか結構煩いところが増えてきていてちょっと残念に思う。

クレームの問題分かるなぁ。日本人って本当に型にはめて考える人種だから受け容れるレンジも狭いし、季節などの不可抗力によるものも理解しようとはしてくれない。
でもこれって売り手の説明不足もあるんだと思うのよね。彼らが消費者にビクビクする余り、こういうソフトの部分をきちんと説明しないから、溝は埋まらず、結局世の中に出回るのは個性のない工業生産されたものになっちゃうんだよね。
一つ一つ違うもの=それぞれ一点ものみたいな感じでポジティブに考えれるようになれば、また日本も幅が出るような気がするよ。

投稿: Aya | 2008/04/22 11:49

ロコママさま

こんにちは!
そろそろ白馬にも春が訪れましたか?
アルトアディジェ、本当におとぎの世界のようでした。
あいにくお天気がいまいちだったのですけど。。。
チーズって奥が深くてそれぞれの造り手からいろんなことを毎回学ばせてもらいます。
次の造り手訪問が今から楽しみです。


投稿: Aya | 2008/04/22 11:53

わぁ~やっぱり町の風景はドイツやオーストリアっぽくってなんかおとぎ話に出てくるみたいでかわいいですよねぇ♪
間違ってもラッツィオでは見れない風景です(笑)
こういう風景好きだわぁ♪
そして、BUNKER!なんかすごい岩だし、洞窟好きのあたくしとしては一度入ってみたいわー☆
やっぱり中はチーズのにおいでムンムンなのかしら?だったらちょっとつらいかなぁ・・・あ、でも大丈夫だ!職場の更衣室のニオイで慣れてるから(笑)

投稿: gellius | 2008/04/22 19:49

私たちも年に1,2回はアルトアーディジェに行くけど、町並みがイタリアっぽくなくって異国情緒たっぷりだよね。
それにしても、Hansiさん(一瞬「阪神」?って思ったわ)のチーズへの情熱、こっちにまでびんびんに伝わってきたわ。一つ一つにこだわりを持ってるんでしょうね。あー、ぜひ味見してみたい!ここは個人客も訪問できるのでしょうか?次、ブレッサノーネの辺りに行ったときには、ぜひ行ってみたい(味わってみたい)です!

投稿: Riccia | 2008/04/23 13:07

チーズ、ほんとに奥が深いのね・・・
働いてた時、沢山のチーズの違いを認識するのに
非常に時間のかかった残念なわたくしですcoldsweats01
大昔から、ものすごい沢山の職人さんたちが、すごい時間をかけてできあがってきてるんだろうね~~

それにしても一番最初の写真のアングル、プロ級だね!!

投稿: パーゴラ | 2008/04/23 14:58

おいしそう~。
自分たちの作っているチーズを知り尽くしての料理との相性、バツグンなのでしょうね。
食べてみたい。。。

紹介する側も作り手もおいしいものをおいしい状態で食べてほしいもの。
商品にするのには、いろいろ考えなければならないことも多いんでしょうね。
ここに来て食べてみてっsign03が実感なのでしょうね。

投稿: あん | 2008/04/23 16:21

読んでいて無性にチーズが食べたくなりました。
日本では生チーズ(って表記でいいんでしょうか、なんか違いますね。すいません。)とにかくプロセスチーズとか加熱しているチーズ以外のチーズを買おうと思うと専門店とか百貨店になってしまって、100g700円とかしちゃうんで、そうそう色々な種類を買うことができません。こんな風にお皿に色々盛られていると、味の違いが解っていいなぁ~。って思いました。

投稿: がっちゃん | 2008/04/23 17:43

gelliちゃま

ほんと、久々にこのゾーンに足を伸ばしたけど、イタリアっぽくないよね~。
Bunker、やっぱ惹かれた?? なかなか立派で中もしっかりとしていて、ビックリ。中に入った瞬間、チーズの芳しい香りがぷ~んって感じだけど、熟成チーズが嫌いな人にはちょっと苦手かもねっ。

>職場の更衣室のニオイで慣れてるから(笑)
うんうん、そのほうが強烈に違いない!

投稿: Aya | 2008/04/23 22:11

Ricciaちゃん

いーな、いーな、確かにヴェネトからだと結構気軽に行ける距離だよね~。白ワインが美味しいゾーンだから、私ももっと頻繁に行きたい・・・

>(一瞬「阪神」?って思ったわ)
ブフッ。さすが、関西人ねぇ。

そう、DEGUST、お店があるので、そこでチーズのデグスタツィオーネが出来るし、購入も出来るよ。
折角なので、また近いうちにお店の情報UPしまーす。

投稿: Aya | 2008/04/23 22:16

パーゴラどの

そっかそっか、飛行機で使ってたのは結構フランスチーズ?
だけど予備知識がないとチーズも複雑だよね。英語じゃないからなじみのない響きも多いしさっ。
一番手っ取り早いのはいろいろと食べて美味しい~と思うこと。そうすると私のように食い意地の張った人間は呑み込みがとっても早いわ(爆)

>それにしても一番最初の写真のアングル、プロ級だね!!
あらら、嬉しいこと言ってくれてありがとしゃん。
でも、写真のアングルが良いというよりも町並みが良く出来ているとも言うよ(苦笑)

投稿: Aya | 2008/04/23 22:20

あんちゃま

いやぁ、本当に美味しかったよ。
チーズとお料理は切り離せないものだから、ホント、どういうミルクをどうやって仕込んでどう熟成させるかでいろんな姿に変わるものだから、熟知したプロの繊細な感覚って凄いって思うよ。
だって基本的な原料はどれもミルク、レンネット、塩だけで何百種類というチーズに様変わりしていろんな用途も変わるんだもんね。

でもいかに素晴らしい作り手がいても、それをきちんと言葉にして橋渡ししてあげないと、この手の手作りチーズは本当に値段も張るので、試してもらうところにすら辿り着かないのよ。
売ってしまえば終わり、というのではなく、日本に届いてからの商品のケアとかマリアージュのアドバイスとか、やることにはいつも事欠かないわ~。
だからただサンプル品を取り寄せて選ぶのではなく、実際に足を運んでみると、どういう場所でどういう人たちがどんな形で仕込んだり熟成したりしているか一目瞭然なので、また自分の仕事の糧にもなるし、何よりもこだわりを持って仕事に臨んでいる人に悪い人はいないから一緒にいて楽しいし刺激になるから、イタリアではとっても有難いことだと思っているよ。

投稿: Aya | 2008/04/23 22:30

がっちゃんちゃま

チーズ食べたい気分になってくれて有難うございますっ。
(って本物食わせろ~って感じですよね。)
日本ではナチュラルチーズといって、普通のチーズを定義してるんですけど、じゃあ、それ以外のチーズはナチュラルじゃないの??とつっこみたくなるんですけどねっ。

でも日本では本当にチーズ高いですよね・・・かくいううちの会社で取り扱っているチーズもほとんど空輸で入れているので、どれも高価なものになってしまってますけど、ほとんど業務卸でリストランテの食材として旅立っていくので、良いものを欲しがってくださるところが大事に使ってくれるので有難いですけどね。
でも、船だと最低でも1ヶ月はかかっちゃうので、ゴルゴンゾーラとか呼吸できずにひどいコンディションで着いたりするんですよね・・・
たまに日本でやむを得ず専門店とかでチーズを買おうとして、いつもどれを買っていいか躊躇するくらい、ひどいものが多くって。
だけど、たまにはチーズのテイスティングも本当に面白いですよ。熟成が若く、なおかつデリケートな順に並べて、ちょっとずつ味わうのってちょっとした贅沢ですよね!

投稿: Aya | 2008/04/23 22:38

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